国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 一時所得の意義
第61回 一時所得の意義
一時所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡としての性質を有しないものをいう。」と定義されております。したがって、ある所得が一時所得に該当するには、�利子所得から譲渡所得までの8種類の所得に該当しないことが必要であり、さらに、�一時の所得であること、�労務その他の役務又は資産の譲渡としての性質を有しないものであることが必要となります。一時所得の典型的なものは、法人からの贈与による利益、懸賞の当選金品、遺失物の拾得報労金などがあります。競輪競馬の払戻金や保険料の負担者が受け取る満期保険金などは、打算的な所得であって偶発的な所得といえるかやや疑問もありますが、これらの所得も一時所得に該当すると取り扱われております。また、職業人以外の者が受け取る原稿料や出演料などは、たとえ一時的な所得であっても、報酬としての性格があることから一時所得の範疇から除外されているのです。
このように、一時所得は、一時的で、偶発的な所得であるところから、長期保有資産の譲渡所得と同様に、50万円を限度とする特別控除後の2分の1相当額を総合課税の対象としております。その趣旨は、一時的、偶発的ないし変動の大きい所得の累進負担の緩和を図るためにあるのです。所得税法では、�退職、譲渡(長期)、一時の各所得については、その所得の2分の1を課税所得とし、�山林所得及び変動所得や臨時所得については、それぞれ多少異なる方法の平均課税(いわゆる5分5乗)を採用しております。このうち、変動所得とは、�漁獲又はのりの採取から生ずる所得、�はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠又は真珠貝の養殖から生ずる所得、�原稿又は作曲の報酬に係る所得、�著作権の使用料に係る所得をいいます。また、臨時所得とは、「職業野球の選手その他一定の者に専属して役務の提供をする者が、3年以上の期間、当該一定の者のために役務を提供し、又はそれ以外の者のために役務を提供しないことを約することにより一時に受ける契約金で、その金額がその契約に係る役務の提供に対する報酬の年額の2倍に相当する金額以上であるものに係る所得」(プロ野球選手の契約金)などをいいます。「棚からぼた餅」のような一時所得に対して2分の1課税をするとは、“けしからん”という考えがあるかも知れません。しかし、所得税法は、年々継続的に生ずる所得と臨時的・変動的に生ずる所得とは、数年間を通じてみると担税力に差があると解して立法されているのです。
2004.4.20
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