国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 一時所得の金額の計算
第65回 一時所得の金額の計算
一時所得の金額は、その年中の総収入金額からその収入を得るために支出した金額の合計額を控除し、その残額から「一時所得の特別控除額」(最高50万円)を控除して計算するのですが、総収入金額から控除する「支出した金額」は、その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限るものとされております。ここでいう「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」とは、例えば、次のようなものがこれに当たります。
[1] 借家の立退きに際して要した費用(立退料収入から控除)
[2] 懸賞クイズ等の当選金の一部を他に寄付することとされている場合の寄付金など(当選金収入から控除)
[3] 車券、馬券の購入費用(競輪、競馬の払戻金から控除)
クイズマニアや競輪、競馬の常連が得た収入からは、収入を獲得した応募毎、レース毎に「支出した金額」を計算することになります。
[4] 過去において支払った生命保険料等の総額(生命保険等の満期返戻金等から控除)
また、一時所得の金額は、長期譲渡所得の金額とともに、各種所得の金額を総合して総所得金額を計算する際、その金額の2分の1を課税対象とすることとしております。つまり、一時所得の金額とは、総収入金額から「収入を得るために支出した金額」及び「特別控除額」を差し引いた金額をいうのであって、2分の1にした金額ではないのです。例えば、生命保険の満期一時金が1,000万円、払込保険料の総額が350万円である場合に、不動産所得の損失280万円があったと仮定しましょう。所得金額は、次のとおりとなります。
[1] 一時所得の金額 1,000万円-350万円-50万円=600万円
[2] 総所得金額 (600万円-280万円)×1/2=160万円
一時所得の金額は常に2分の1にした金額になると理解していますと、次のように計算してしまう結果となるのです。
[1] 一時所得の金額 (1,000万円-350万円-50万円)×1/2=300万円
[2] 総所得金額 300万円-280万円=20万円
このような計算をすると、給与収入が2,000万円以下のサラリーマンの方は、所得金額が20万円以下であるので、確定申告をしなくてもよいと誤解したり、専業主婦の方は、所得金額が38万円以下となるから、夫の所得税の計算に当たって配偶者控除の適用があると誤解することになりかねないのです。
2004.6.24