国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 公的年金等に対する課税
第66回 公的年金等に対する課税
国民年金の未納問題は、与野党の国会議員からマスコミ関連者まで広がり、年金改革が参議院選挙での争点の一つにもなっております。この年金問題については、税制面からも改革が提言されております。税法では、公的年金等は雑所得に該当し、その年中の公的年金等の額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を算出することになっております。そして、この場合の公的年金等とは、[1]社会保険又は共済の制度に基づく公的な制度から支給される年金、[2]恩給及び過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金、[3]社外積立型の企業年金又は外部拠出性の企業年金をいいます。[1]に該当するものには、国民年金法、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済組合法、農林漁業団体職員共済組合法及び農業者年金基金法に基づく年金などがあります。また、[3]に該当するものには、確定給付企業年金法に基づいて支給される年金、確定拠出年金法に規定する企業型年金規約又は個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される年金、適格退職年金契約に基づいて支給される年金、特定退職金共済団体からの年金、中小企業退職金共済法に基づく分割退職金及び小規模企業共済法に基づく分割共済金があります。
さて、年金課税の問題について見ておきましょう。現行の年金課税の仕組みは、[1]社会保険料の全額が拠出時の所得控除となるところ、[2]給付される年金からは給付時に「公的年金等控除額」を差し引くこととされており、また、[3]厚生年金保険料の事業主負担や適格退職年金又は確定給付企業年金等の事業主掛金は、事業主の所得金額の計算上損金(必要経費)に算入するとともに、従業員の給与所得の収入金額にされません。つまり、社会保険料の拠出段階では、所得控除として課税所得から差し引かれている(しかも、企業負担部分は全く課税されていない)にも係わらず、給付段階では、企業負担の掛金に相当する部分を含めて一定の控除を認めているのであり、年金所得の課税漏れではないかというのです。この問題について、平成15年6月の税制調査会中期答申「少子・高齢社会における税制のあり方」では、[1]少子・高齢化の進展に伴ってますます増大する社会保険料拠出と年金給付がともに課税ベースから脱漏することになり、個人所得課税の基幹税としての機能が更に減殺されていく、[2]年金課税の整合性という観点からみて、拠出した段階を非課税としたまま給付段階も実質非課税とする現行税制は一貫性を欠いている、[3]高所得者に該当する高齢者まで一律に現役世代と比べて優遇しており、高齢者間だけでなく、世代間でも不公平が生じている旨指摘しているところです。
2004.7.10