実践!不服申立 第3回 ~更正の理由~
前回は、実際の更正通知書がどういうものか、そしてそこには何が書かれているのかについてご説明させて頂きました。
今回の「第3回~更正の理由~」では、その更正通知書に一緒にくっ付いている紙についてお話しをさせて頂きます。
タイトルからもお分かりのように、皆さんが提出をされた申告書を税務署が「認められない!」というわけですから、そこには当然「何故認められないのか」という説明がされています。
これを、「更正の理由」と言います。
法人税法第130条第2項(青色申告に係る更正)
税務署長は、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合には、その更正に係る国税通則法第28条第2項(更正通知書の記載事項)に規定する更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない。
所得税法第155条第2項(青色申告に係る更正)
税務署長は、居住者の提出した青色申告書に係る年分の総所得金額、退職所得金額若しくは山林所得又は純損失の金額の更正をする場合には、その更正に係る国税通則法第28条第2項(更正通知書の記載事項)に規定する更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない。
上の法律は要するに、「青色申告書に記載されている金額が間違っているということを言う場合には、何故それが間違っているのかという理由を書かなくてはいけない」と規定しているわけです。
では、更正の理由書を見てみましょう。
まず、一度ざっと読んで見て下さい。それから落ち着いて読み直してみましょう。ここで気を付けて頂きたいのは、更正の理由書には次の3つの点が書かれているか、ということです。その3つとは、
1.更正の原因となる事実
2.それへの法の適用
3.結論
つまり、「1.貴社はこういう行動をとり、それに沿った申告をしました」、「2、でも税法に照らして考えると、貴社のやり方には問題がありましたね」、「3.だから、貴社の申告を認めることは出来ませんから、更正処分しますよ」、ということになる訳です。
見事な三段論法です。
しかし、もう一度よく読んで下さい。本当に3つのポイント全てが書かれていますか?もし、この内の一つでも欠けている場合には、それは「理由附記の不備」ということから、この更正処分は違法だということになり、取り消させることが可能になります(一口メモ参照)。
この「更正の理由」は非常に大事なことです。何故なら、納税者がこれから戦おうとした場合に「税務署の言い分の何が間違っているか」を研究することが出来る材料となるからです。これを最高裁判所は、「処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える(提訴判断及び争点明確化機能)」と言っています。
では、次回からはいよいよ、~不服申立の手続き~についてお話しをさせて頂きます。
一口メモ ごく稀にですが、理由の書き方が足りないということに税務署が気が付いて、自ら処分を取り消してくることがあります。でもそれで終わりではないのです。「再更正」といって、理由を書き直してもう一度更正処分をしてくるのです。
(文責 税務部:高田貴史)
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