実践!不服申立 第4回 ~不服申立の手続き~ [1] 不服申立が出来る処分
前回は、税務署が判断した「更正の理由」についてご説明させて頂きました。
今回の「第4回~不服申立の手続き~」からは、いよいよ、「では、どうやって税務署と闘っていくか」の手続上の方法を順を追って解説していきたいと思います。
このシリーズ~不服申立の手続き~の1回目は、「不服申立が出来る処分」につきご説明してまいります。「よし、税務署と闘ってやろう!」と意気込んだのは良いものの、フタを開けてみたら、不服申立が出来ない処分だったということがあります。そのようなことにならないように、法律ではどのような処分について不服申立が出来ることになっているのかを見ていきましょう。
国税通則法第75条第1項
国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に掲げる不服申立てをすることができる。
1 税務署長がした処分(次項に規定する処分を除く。) その処分をした税務署長に対する異議申立て
2 国税局長がした処分 次に掲げる不服申立てのうちその処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立て
イその処分をした国税局長に対する異議申立て
ロ国税不服審判所長に対する審査請求
3 国税庁長官がした処分 国税庁長官に対する異議申立て
4 税関長がした処分 その処分をした税関長に対する異議申立て
5 国税庁、国税局、税務署及び税関以外の行政機関の長又はその職員がした処分 国税不服審判所長に対する審査請求
つまり、国税通則法において不服申立の対象とされる事項は、「国税に関する法律に基づく処分」となるのですが、簡単に言えば次の通りとなります。
[1] 税務署長がした処分
[2] 国税局長がした処分
[3] 国税庁長官がした処分
[4] 税関長がした処分
[5] 国税庁、国税局、税務署及び税関以外の行政機関の長又はその職員がした処分
上記のうちで最も一般的なものは、[1]の「税務署長がした処分」です。まれに[2]の「国税局長がした処分」を見ることもありますが、やはり一番多いのは税務署長がした処分だと思います。
さて、ここで「処分」という言葉の意味ですが、行政庁の処分とは、「行政権の発動として、行政庁が行政法規を具体的に適用し又は執行することによって、具体的に法律上の効果を生じさせる行為をいう」ものとされています。少し難しく聞こえますが、具体的に言いますと、「更正、決定、再更正、賦課決定、滞納処分、税法上の各種申請に対する拒否、青色申告の承認申請の取消し」などが代表的な「処分」です。
つまり、不服申立の対象となる処分は、「不服申立人の権利や利益を侵害するもの」ですから、納税者にとって利益となる処分、例えば、「納付すべき税額を減額する更正」、「還付金に相当する税額を増額する更正」等につきましては、その取消しを求める法律上の利益がないことになり、不服申立の対象にならないもの(一口メモ)とされていますから気を付けて下さい。
では、次回は、~不服申立の手続き~の[2]「不服申立の種類と不服申立先」についてお話しをさせて頂きます。
一口メモ 不服申立が出来るかどうかを簡単に見分ける方法ですが、届いた書類をスミズミまで見てみて下さい。不服申立が出来る場合は、どこかに、「この処分に対して不服がある場合は、○○に対して異議申立(審査請求)をすることが出来ます」といったような内容が書いてありますから。
出来ない場合には、「何も書いてない」か、「この処分に対して不服がある場合は、○○に対して異議申立(もしくは審査請求)をすることが出来ます」と、ご丁寧に線で消してくれてあります。
(文責 税務部:高田貴史)
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