ChatGptと読むフジ調査報告書

株式会社フジテレビジョン(以下、「フジテレビ」といいます。)は、2023年6月に発生した元タレントの中居正広氏(以下、「中居氏」といいます。)と女性とのトラブルにつき、2025年3月31日付で第三者委員会による調査報告書(以下、「本報告書」といいます。)を公表しました。本報告書は、社会的関心も高く、またどの企業でも起こり得るハラスメント対応を検討するにあたって重要な先例となります。もっとも、本報告書は全体で300頁に及ぶものであり、どのような観点から本報告書を読み解くかについては頭を悩まされるところです。そこで、本報告書が日本弁護士連合会が公表している「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」(以下、「ガイドライン」といいます。)に基づき事実認定を行っていることに着目し、ChatGPTに本報告書がガイドラインとの関係でどういった点が懸念点としてあり得るかについて聞いてみました。ChatGPTによれば、以下の点が挙げられています。

①調査報告書の開示範囲と透明性

ガイドラインでは、調査報告書は原則として遅滞なくステークホルダーに開示すべきとされています。しかし、フジ・メディア・ホールディングスの報告書では、開示範囲が限定的であり、非開示部分の理由も明確に示されていない可能性があります。

②調査の独立性と中立性

ガイドラインは、第三者委員会の委員が企業と利害関係を有しないことを求めています。フジ・メディア・ホールディングスは、委員がフジテレビと利害関係がないとしていますが、具体的な関係性や過去の取引履歴などが明示されておらず、完全な独立性が担保されているか疑問が残ります。

③調査の深度と再発防止策の具体性

ガイドラインは、事実認定だけでなく、原因分析や具体的な再発防止策の提言を求めています。フジ・メディア・ホールディングスの報告書では、再発防止策が表層的であり、実効性に乏しいとの指摘があります。

まず、上記①の点についてです。本報告書は、2023年6月2日に女性が中居氏のマンションの部屋に入ってから退室するまでの間に起きたことについて、女性が中居氏によって性暴力による被害を受けたものと認定しました。しかしながら、マンション入室後~退室するまでの間の出来事は守秘義務との関係や女性の人権及びプライバシーに配慮し、当該事実を詳細に事実認定し調査報告書に記載することを目的とするものではないと判断したとされ、本報告書に記載はされていません。「性暴力」という認定をした書きぶりは、刑事責任を認めるような内容とも捉えられるため、より本報告書において開示しなかった点に関する丁寧な説明が必要であったのではないかと考えられるところです。

次に、②の点についてです。当然のことながら、第三者委員会の委員には、対象会社と利害関係がないことが求められます。委員については、本報告書1頁以下の第3及び第4で言及があるところですが、経歴の紹介にとどまっており、ChatGPTが指摘するように詳細な情報まで記載がない点は懸念が生じうるところです。

最後に、③の点についてです。再発防止の点は、本報告書の第9章、262頁以下に記載があります。本報告書は、世界的な動きであるビジネスと人権という観点から、人権尊重を軸とした再発防止策を提言しています。ビジネスと人権という視点は、非常に重要なものですが、フジテレビという大きな組織が変革を迎えるにあたって、社員1人1人の意識改革が必要という点を考えると、本報告書の内容は抽象的な指摘にとどまっているという印象は拭えないと言えるでしょう。

このように、ChatGPTによる指摘を踏まえると、300頁近い本報告書におけるポイントがみることができました。今後は、フジテレビ自体がどのように変わっていくのか、さらにそういった動きがテレビ局の組織風土にもどのように影響があるかが着目されるところです。

以上

引用:

※1 https://www.fujitv.co.jp/company/news/250331_3.pdf

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