カスハラ対応できていますか

1 カスハラを巡る動きと現状

2024年10月4日、客からの迷惑行為(カスタマーハラスメント、以下「カスハラ」といいます)を防止するための「東京都カスタマーハラスメント防止条例」(以下「カスハラ防止条例」といいます)が制定され、2025年4月1日から施行されます。このようなカスハラ防止を内容とする条例の制定は、東京都が全国で初となります。

このような条例が制定された背景として、カスハラが社会問題となっているということが挙げられます。2022年10月、日本労働組合総連合会が実施した、18~65歳の労働者を対象とした調査(※1)によると、職場でカスハラを受けた人は13.5%でした。この数値は、パワハラ(23.3%)に次いで多く、セクハラ(8.1%)を上回る数値となりました。また、同資料によると、直近3年間で受けたことのあるカスハラとしては、「暴言」(55.3%)、「説教など、権威的な態度」(46.7%)、「同じクレーム内容の執拗な繰り返し」(32.4%)が挙げられています。

2 カスハラ防止条例の内容

そもそもカスハラは、当該行為が刑法上の暴行罪や傷害罪、脅迫罪等に該当する場合は刑事処罰の対象となりますが、刑法上の罪にまで問われない程度のものである場合に規制をする法規制はありませんでした。そのような状況において今般東京都がカスハラ防止条例の制定を行ったのは大きな試みであり、全国的な広がりとなることも十分に考えられるところです。

まずカスハラ防止条例では、カスハラを「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものをいう」(第2条5号)と定義します。そして、「著しい迷惑行為」とは、暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言などの不当な行為をいうとされています(※2)。また、カスハラ防止条例では、事業者の責務・努力義務などが定められていますが、違反した場合に罰則を伴う内容とはなっていません。

3 企業への今後の影響

カスハラが生じた際に、企業として何らの対策を講じない場合、カスハラが原因で従業員が心身に支障をきたした場合には、企業の従業員に対する安全配慮義務違反に問われることになりかねません。企業としては、カスハラ防止条例の他に厚労省が公表しているカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(※3)を参照して、対策を講じることとなります。具体的には、①カスハラが生じた際の対応体制の整備、マニュアルの制定、②対応に苦慮した際の外部の専門家への相談ルートの確保、③従業員に対する研修の充実などが挙げられます。企業としてのカスハラに対する対策がまだという場合は、今回のカスハラ防止条例の制定をきっかけにして、対策を進めてみてはいかがでしょうか。

以上

引用:

※1https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20221216.pdf?18

※2別紙 (tokyo.lg.jp)

※3000915233.pdf (mhlw.go.jp)

 

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