Q 固定資産評価審査委員会の決定が誤っていた場合、自治体は賠償責任を負うか?
A 自治体による固定資産の評価額(登録価格)を法的に争うには、まずはその自治体の固定資産評価審査委員会に審査申出を行います。
同委員会は、納税者の主張の全部又は一部を認め、評価額の修正を行うべきと判断した場合には、審査申出を「認容」する旨の決定を行います。他方で、評価額の修正を行う必要はないと判断した場合には、審査申出を「棄却」する旨の決定を行います。
納税者は、同委員会の決定に不服がある場合には、決定があったことを知った日から6カ月以内に同委員会の決定の取消しを求めて訴訟を提起することができます。訴訟の結果、納税者の主張が認められた場合、同委員会の決定は、裁判所の判決によって取消しがなされます。この場合、結果的には、同委員会の決定は誤っていたといえます。納税者としては、同委員会が適切な決定を下していれば、弁護士費用を負担してまで訴訟をせずに済んだはずだと考えるかもしれません。
実際、丹波市の土地の所有者は、丹波市を被告として、丹波市固定資産評価審査委員会の決定の取消しを求めるとともに、同委員会の違法な決定によって取消訴訟を提起せざるを得なくなったとして、国家賠償法に基づき弁護士費用相当額を損害として請求しました。神戸地裁と大阪高裁は、同委員会の決定の取消しは認めつつも、同委員会の委員には職務上の注意義務違反は認められないとして、損害賠償請求は認めませんでした。しかし、最高裁は、同委員会の決定の取消しを認め、かつ、同委員会の判断には相当な根拠はなく、同委員会の委員には職務上の注意義務違反が認められないとした大阪高裁の判断は違法であるとして、これを原審の大阪高裁に差し戻しました(最判令和4年9月8日判タ1504号18頁)。すなわち、最高裁は、相当な根拠なくなされた同委員会の決定は国家賠償法上、「違法」であり、市はこれによって納税者に生じた損害を賠償する必要があると事実上、判断したといえます。
固定資産評価審査委員会は、第三者機関として、公正中立な立場から固定資産の評価額の適正性を審査すべき立場にあります。委員は市町村長(東京都は東京都知事)によって選任されます(地方税法423条3項)。しかし、固定資産の評価額に係る決定をしたのもまた市町村長です(同410条1項本文)。納税者が同委員会について、「自治体に寄った判断をするのではないか」との目を向けることも無理もないことです。同委員会が漫然と自治体を擁護するような決定を下せば、その決定は国家賠償法上、違法と判断され、自治体が納税者に賠償義務を負うことになるという点は、同委員会としても注意すべきでしょう。
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