フリー素材の落とし穴

1 はじめに

2024年8月21日、滋賀県大津市は公民館の広報誌に使用したイラストに著作権侵害があったとして、著作物の管理者に損害賠償金29万4250円を支払うことを発表しました(※1)。このように自治体において、著作権を侵害したとして賠償金を支払うこととなったケースは、他にもあります。高額な賠償金と支払ったものとしては、山梨県富士川町で広報誌やチラシに掲載した人物のイラストなど4点が無断使用であったとして、著作権者に111万5380円の支払をしたケースがあります(※2)。

2 何が問題なのか

このような問題は、インターネット上で「無料 ○○ イラスト」と検索したものを無料で使用できるイラスト、いわゆるフリー素材だと考えて使用したところ、実はそのような位置付けのものではなく、他人の著作権を侵害していたということに起因します。

著作権を侵害された場合の賠償金の算定額は、譲渡等数量からの推定によるもの(著作権法114条1項)、侵害者の利益額による推定によるもの(同条2項)、ライセンス料相当額による推定によるもの(同3項)がありますが、イラストを使用する頒布物の数が多い場合、一般的に著作権侵害を起こした場合の賠償金(解決金)も多額になるといえます。

3 トラブルを防ぐためには?

それでは、このようなトラブルを防ぐためにはどのようにしたらよいでしょうか。

作成する資料にイラストを使用したいと考えた場合、そのイラストを取得したサイトに掲載されている「利用規約」を必ず確認する必要があります。利用規約には、イラストを使用した際の利用料は「無料」となっていた場合であっても、「私的使用」に限るなどの条件が記載されていることがあり、この場合それ以外の目的で使用する場合には料金が発生することとなるからです。また、その他にもイラストの使用に際し、何点以上の使用からは料金が発生するなどの細かい条件が規定されている場合もあります。このような細かい条件を確認してからでないと、会社内など内部で使用する場合であっても、著作権侵害が生じないかにつき確認が取れないですし、対外的な頒布物についてはより慎重な確認が必要となります。

4 最後に

悪気はなく知らず知らずのうちに著作権を侵害していた場合であっても、時に高額な賠償金(解決金)が発生する場合があります。インターネット上のイラスト等をフリー素材として使用する際は、一度利用規約を確認した上で、掲載するかを決めることをおすすめします。

以上

引用:

※1 中日新聞Web2024年8月21日

※2 サタデーウオッチ9(8月3日放送)

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