2025年4月1日施行※1の改正育児・介護休業法が成立!
1 はじめに
タイトルをご覧になって、「あれ、また?」と感じられるかも知れません。育児・介護休業法は少し前にも改正されており、2022年10月から“産後パパ育休制度”が創設されたことや、育児休業の分割取得が可能になったことは記憶に新しいところです。
これに続き、2024年5月に、改正育児・介護休業法※2が成立・公布されました。改正の趣旨は、今回も男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするためです。働きながら育児・介護をする社会環境の整備は徐々に進んでいますが、両立を実現するには柔軟な働き方を可能とする更なる施策が必要なことから、新たな法改正が行われました。
改正される点は複数に亘りますが、最も注目すべきは、新たに企業に課せられる“柔軟な働き方を実現するための措置”を講じる義務です。他にも、企業の人事労務管理に比較的大きな影響を与える改正点があります。
詳細は今後省令等により明らかになる予定ですので、以下では改正法の概要をご説明いたします。
2 育児・介護休業法の改正ポイント
(1)柔軟な働き方を実現するための措置の新設【施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日】
今回の改正で新設されました。企業は、3歳~小学校就学前の子どもを養育する従業員に関して、“柔軟な働き方を実現するための措置”として、下表の中から2つ以上の制度を選択して講じなければなりません。
企業は、措置を講じるに際して過半数組合等から意見聴取をする必要があり、また、講じた措置について従業員へ個別に周知・意向確認することも義務付けられます。
従業員は、企業が講じた措置の中から1つを選んで利用することができます。
(2)子の看護休暇の見直し【施行日:2025年4月1日】
現行の「子の看護休暇」について、休暇の取得事由と対象となる子どもの範囲が拡大される形で見直され、名称も「子の看護等休暇」と少しだけ変更されます。
現行では、小学校就学の始期に達するまでの子どもについて、従業員が、病気・けがの世話や予防接種・健康診断を受けさせるため必要なときに取得できる休暇です。それが、改正により、子どもの範囲が小学校3年生修了まで広がり、取得事由も、病気・けがの世話や予防接種・健康診断を受けさせるため必要なときに加え、学級閉鎖等に伴う世話や入園(入学)式・卒園式への参加のため必要なときも取得できる形で拡大されます。
また、改正によって、看護等休暇を取得できる従業員の範囲も広がります。現在は、労使協定を締結すれば、①引き続き雇用された期間が6か月未満の従業員及び②週の所定労働日数が2日以下の従業員について、看護等休暇を取得できる従業員から除外することができます。しかし、改正法では、労使協定の締結で除外できる従業員は②だけとなるため、①の従業員も労使協定により除外されることなく看護等休暇を取得できることになります。
(3)所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大【施行日:2025年4月1日】
現行の“所定外労働の制限”は、3歳未満の子どもを養育する従業員が請求すれば、残業を免除されるというものです。改正により、残業免除の請求をできる従業員の範囲が、3歳未満の子どもを養育する従業員から、小学校就学前の子どもを養育する従業員まで拡大されました。
(4)育児のためのテレワーク導入が努力義務化【施行日:2025年4月1日】
現在も、従業員が育児と仕事の両立を図れるよう、企業には一定の措置を講じる努力義務が課されています。一定の措置とは、例えば、(小学校就学前の子どもを養育する従業員に対し)育児目的の休暇を付与することや、(3歳未満の子どもを養育する従業員に対し)フレックスタイム制を認めること等です。
改正により、一定の措置にテレワークが追加されました。すなわち、企業において、3歳未満の子どもを養育する従業員がテレワークを選択できるような措置を取ることが努力義務化されます。
(5)その他
新設された企業の義務として、妊娠・出産の申出時や子どもが3歳になる前に、従業員の仕事と育児の両立に関する個別の意向を聴取し配慮することが定められました。(施行日は公布後1年6か月以内の政令で定める日です。)個別の意向聴取と配慮とは、例えば、勤務時間帯や勤務地の意向を従業員から確認した上で、企業側の状況に応じて配置や業務量を調整するなど、従業員の意向に配慮しなければならないというものです。
また、育児休業取得状況の公表義務が、現在は従業員数1000人超の企業に課されていますが、改正により、300人超の企業に拡大されます。(施行日は2025年4月1日です。)
介護に関しても、介護離職を防止するため、介護に直面した従業員が申出をした場合に、企業が両立支援制度等の情報を個別周知し意向確認することが義務付けられる等の改正が為されています。(施行日は2025年4月1日です。)
3 次世代育成支援対策推進法の改正ポイント
今回、育児・介護休業法の改正とともに、次世代育成支援対策推進法も改正されました。
まず、法律の有効期限が2025年3月31日までとされていたのが、2035年3月31日まで延長されました。(既に施行されています。)
そして、2025年4月1日に施行される改正内容として、一般事業主行動計画の策定(常時雇用する従業員が101人以上は義務、100人以下は努力義務です。)に関して大きく2つのことが盛り込まれました。
1つ目は、行動計画策定のPDCAサイクルを確立すること、すなわち、育児休業取得状況や労働時間の状況を把握し、改善すべき事情を分析した上で、分析結果を踏まえて新たな行動計画を策定・変更することです。2つ目は、行動計画策定に際し、育児休業の取得状況や労働時間の状況に関する数値目標を設定することが義務付けられます。
以上
※1 改正法の一部については施行日が異なります。
※2 同時に次世代育成支援対策推進法も改正されています。
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