生成AIって何?
2024年1月9日(現地時間)、世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2024」がアメリカのラスベガスで開幕しました。CESでは、ソニーグループと本田技研工業の合弁会社であるソニー・ホンダモビリティが、マイクロソフトと提携して、開発中のEV「AFEELA(アフィーラ)」に従来の音声コマンド操作のみに捉われない新たなAIを用いた操作技術を導入することを発表しています(※1)。このように最新の技術を考える際にAIは欠かせない視点ですが、最近よく耳にする生成AIとは何でしょうか。
生成AIとは、明確な法律等の定義はありません。内閣府知財財産戦略推進事務局作成資料によれば、「画像生成、文章等の分野では、いくつかの単語や文章・画像を入力するだけで、まるで人間が作成したかのような高精度なコンテンツを生成する」とされています(※2)。実際に有名なツールとしては、文章生成ツールとしての「ChatGPT」、入力されたテキストデータをもとに画像生成をする「DALL-E2(ダリツー)」があります。
生成AIは、専門的な知識が無くても指示をテキストなどで入力するのみで、簡単に文章や画像などを生成させることができる点が従来のAIと比較しても最大の特徴であり、強みでもあります。しかしながら、生成AIを使用する際は、①著作権などの知的財産権を侵害していないか、②入力する情報が秘匿性の高いものではないかという点に特に注意をする必要があります。
まず、生成AIを使用する際に注意したい知的財産権としては、著作権、商標権、意匠権、パブリシティ権がありますが、特に注意をしたいのは著作権との兼ね合いです。単に生成AIに他人の著作物を入力するだけの行為は、原則として著作権法30条の4の「情報解析」「非享受利用」に該当すると思われるため、著作権侵害のリスクはかなり低いものの、生成AIを利用して出力された生成物が、既存の著作物と同一・類似している場合は、当該生成物を利用(複製や配信等)する行為が著作権侵害に該当する可能性があります(※3)。
次に、生成AIは入力された情報をもとに学習を進めていくため、個人情報や営業秘密、機密情報等の秘匿性が高い情報を入力してしまうと、情報が生成AIの提供会社やユーザーに流出される可能性があります。そのような情報でなくとも、会議の議事録の要約の際に便利であるからといって、生成AIに会議録を入力し、思わぬ情報の流出につながってしまったということになりかねません。このような事態を防ぐためには、生成AIを利用する際のガイドラインを定め、その中に生成AIに何を入力してよいかを規定するといったルールの明確化が重要となります(※3)。
生成AIは日進月歩の成長を遂げており、インターネットのように近い将来私たちの生活に欠かせない存在になってくることでしょう。よく分からないから利用しないという選択肢をとるのではなく、使用する際の注意点に留意した上での活用を検討してみてはいかがでしょうか。
以上
引用:
※1 2024年1月10日付け日経新聞
※2 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ai_kentoukai/gijisidai/siryou2.pdf
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