暗号資産信託

 三井住友トラストは暗号資産やNFTを管理する信託会社を設立するとのことだ(5月24日日経)。
 暗号資産を信託財産とする信託会社の設立を顧客と一緒に検討したことがある。しかし中途半端なまま頓挫した。記事によれば「秘密鍵」を預かるとのことだが、「秘密鍵」は動産ではなく金銭でもない。特定の場面だけで働く情報なのだろう。情報は信託財産になるのかといえば、なるという学説がある。ただし、これが金銭に評価できる財産なのかという疑問はある。秘密鍵は暗号資産を移動するときに必要な道具ではある。しかし暗号資産そのものではない。また、この鍵を信託譲渡するというのは具体的にはどういう行為なのか。
 そもそも事業者がオフラインで預かるなら、わざわざ信託しなくても安全性に差異はないのではないか。したがって信託ニーズがないのではないか。
 いろいろな疑問が湧くが、信託にもデジタルにも精通した同行行員が主導しているのだろう。注目していきたい。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

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