内部統制と成長戦略 COSOは会社法に影響する

COSOは会社法に影響する

 金融商品取引法の要求する財務報告に関する内部統制体制の構築は、COSOのフレームワークを利用することになる。COSOの発想の根源は、粉飾決算を撲滅するための実効的方法の確立にある。
キーワード的に言えば、COSOの発想では、「実効性」が本質的要素である。今後、内部統制体制に関する二つの法律である会社法と金融商品取引法、また、その周辺の法律を考える場合には、「実効性」という面がキーワードとなると捉えるべきである。
 従来の日本の社会は共同体社会であり、本音と建前の区別があり、社会的実効性があったのは、本音の社会規範である共同体社会における掟であった。建前の社会規範である法律の実効性は小さかった。その典型例が、業界ぐるみの談合である。業界の掟が実効性を持ち、談合は当然視された。その反面、談合を禁止する法律は一罰百戒的機能しか持たず、社会的に、実効性があるとは言えなかった。
 ところが、日本社会がグローバルな競争を受け入れる必要がある現状では、本音と建前の使い分けは通用しない。日本固有のローカルルールである共同体社会における業界の掟は、グローバルな競争のルールとはなりえないからである。
 反面、今後のグローバルな競争のルールとして、従来の建前であった法律が実効的な規範となるのは必定である。最近の立法はその方向性を持ち、その立法に当たった行政の担当官は、そのことを意識している。
 法律が実効的な社会規範となった場合は、生きた法律ルールを確認する裁判が社会の重要な位置を占める。そのことから、それに備えて、弁護士を増やすための司法改革が現在、急激な勢いで進行している。
 経営者、その他の企業関係者は、今後の社会では、実効的社会規範が従来とは異なるものになることを知る必要がある。社会の基本ルールが変わり、社会的秩序が変わることを意味するから、それは、革命というに等しい。その目に見えない革命が現在、行われているのである。  従来の発想で経営をすることは、今後は、反革命的行為として、法的な厳しい制裁を受ける可能性が高くなる。官製談合も含めての談合の一斉摘発、多数の金融機関に対する業務執行停止処分、大手監査法人の崩壊を招いた監査法人に対する業務執行停止処分、西武鉄道事件、カネボウ事件、ライブドア事件、日興コーディアルグループ等最近の事件は、従来の建前であった法律が実効的規範として機能した新しい現実を示す事例である。
 同時に、法律が単なる建前から実効的な社会規範となることから、法律は社会の生きた常識を取り入れ始め、そのため、コンプライアンスは法令遵守から法令等遵守へと拡大し始めている。その典型例が、不二家事件、リンナイ事件だ。不二家事件、リンナイ事件は、従来のように法律が建前であれば法律違反はないのであるから、経営者に辞任を迫るようなことはなかったと考えられるからである。
 以上のように、法律が社会の実効的規範となることを考えると、会社法も実効的な規範として企業社会を規律するものとなる。そうだとすれば、経営者による内部統制体制の構築に関する会社法の規律を実効化するため、COSOの発想が会社法の解釈に反映されるのは必定である。
(以上、生産性新聞2007(平成19)年4月25日号より転載)

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