高齢者の自宅はいつ売るか。

 先週発売の週刊現代に「最後まで自宅を売ってはいけない」という見出しがある。郊外の戸建て住居を売って、小ぶりの駅近マンションに引越す、高齢者施設に入居する、というのが現在のトレンドとも言える。このトレンドに対するアンチテーゼだろう。住み慣れた自宅を売って転居すれば、それまでの地域コミュニティから断絶する、新居の慣れないレイアウトで怪我をする、などが売ってはいけない理由として挙げられている。たしかにそういう側面はあるが、問題はいつが「最後まで」かだ。郊外の戸建ては需要が乏しくなってきているから、先延ばしするほど価格は下がる懸念がある。死んでから手放すのは相続人の負担になるし、共有になって事実上売却できなくなるリスクもある。死ぬ前でも認知症になってしまえば売却契約の能力を失う。「最後まで」持って売るにしても、民事信託などによって、いつでも売却できる準備をしておくのは悪くはないだろう。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

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