【印紙税】どのような文書に特に注意が必要ですか?
税務調査によって印紙の貼り漏れを指摘され、多額の過怠税を課されることを避けるためには、特に次のような文書について印紙税の要否を慎重に確認する必要があります。
1.消費者に対して交付する文書
消費者に対して交付する文書は、膨大な枚数が作成されます。そのため、仮に1通あたりの印紙代が200円だったとしても、トータルの過怠税は莫大な金額となります。印紙税法上の「契約書」には、一方当事者の作成する文書も含まれるため、会社から消費者に対して一方的に交付する文書であっても印紙が必要になる場合があります。例えば、「確認書」、「ご案内」、「伝票」というような文書であっても、印紙税法上の「契約書」にあたり、印紙が必要になる場合がありますので、注意が必要です。
2.継続的な契約関係にある者との間で交わす文書
営業者間で交わされる継続的な取引関係のための契約書(いわゆる「基本契約書」)は、一定の要件を満たす場合には第7号文書として、1通あたり4000円の印紙の納付が必要になります。「基本契約書」そのものには印紙を貼っていても、その当事者間で交わされる「覚書」や「変更契約書」に印紙を貼っていないケースやある文書が印紙税法上は第7号文書にあたることに気づかずに大量に作成してしまうケースが散見されます。第7号文書の印紙代は1通あたり4000円と高額であるため、一般的には過怠税も大きな金額となります。
3.文書の表題が「契約書」ではない文書
「一定の契約書には印紙を貼らなければならない」ということは広く知られているため、文書の表題が「契約書」となっている場合には、通常、文書を作成している部署から経理部や法務部に文書を回覧し、印紙の要否のチェックを受けることになります。そのため、文書の表題が「契約書」となっている文書について、後に税務調査において印紙の貼り漏れを指摘されるケースはさほど多くはありません。しかし、裏を返すと、文書の表題が「契約書」となっていない文書の場合には、文書を作成している部署では印紙代が必要になるかもしれないという認識を持つことができず、結果として経理部や法務部による印紙の要否のチェックを受けないまま、大量に文書を作成してしまうことがまま起こります。近時の新聞報道を見る限り、多額の過怠税を課されたケースでは、いずれも文書の表題は「契約書」ではありませんでした。このように、文書の表題が「契約書」ではない文書こそ、慎重に印紙の要否を検討する必要があります。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 山田重則
コラム一覧はこちら
関連するコラム
-
2021.05.17
奈良 正哉
DXを後押しする印紙税
ほぼ1ページを使って印紙税の解説記事が掲載されている(5月17日日経)。印紙税の存在自体がDX後進…
-
2020.05.10
山田 重則
【印紙税】どのような者が「作成者」に該当しますか?
課税文書の「作成者」が印紙税の納税義務を負います(印紙税法第3条)。そして、「作成者」とは、課税文…
-
2020.05.10
山田 重則
【印紙税】どのような場合に課税文書を「作成」したといえますか?
印紙税は、「課税文書」を「作成」した場合に課されます(印紙税法第3条)。そして、「作成」とは、単に…
-
2020.05.10
山田 重則
【印紙税】どのような場合に非課税規定の適用がありますか?
ある文書に課税事項の記載がある場合、その文書には、原則として、印紙税が課されます。しかし、その文書…
山田 重則のコラム
-
2024.12.16
山田 重則
同性の事実婚状態にある者は社会保険関係の法令上、「配偶者」にあたるか。
遺族年金は、一定の要件を満たす「配偶者」に対し、支払いがなされます。そして、「配偶者」については、「…
-
2024.10.20
山田 重則
固定資産税実務Q&A
<総論> Q 固定資産税の過大徴収はどの程度起きているか? Q 近年、新聞報道された過大徴収事案には…
-
2024.09.30
山田 重則
Q 近年、新聞報道された過大徴収事案にはどのようなものがあるか?
A 近年、新聞報道された主な過大徴収事案は、下表のとおりです。ここから読み取れることは、①過大徴収は…
-
2024.09.28
山田 重則
Q 固定資産評価審査委員会の決定が誤っていた場合、自治体は賠償責任を負うか?
A 自治体による固定資産の評価額(登録価格)を法的に争うには、まずはその自治体の固定資産評価審査委員…