民事信託の増加

 民事信託の公正証書作成件数が2018年は2223件で、2019年はさらに増加傾向であるそうだ(10月1日日経夕刊)。民事信託を扱う者としては、「こんなものか」という程度の感想しか持たないが、顧客の間でも高齢者の財産管理手法として認知度が高まっているとの実感がある。民事信託契約書は必ずしも公正証書にする必要はないが、民事信託をきちんと動かすには、信託専用の銀行口座を作る必要がある。その口座を開設してくれる金融機関では、公正証書にすることを求められることがほとんどだ。だから、「きちんとした」民事信託の取組は上記数字に近いものだろう。ただ、民事信託は信託された財産だけを保護するもので、信託されていない財産は保護しない。さらに、保護するのは財産だけであって、高齢者の身上は保護しない。他の制度と総合的に考えることが肝要だ。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

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