裁判員裁判のコスト
弁護士が裁判所の内部に触れるのは、司法修習時期の数か月に過ぎない。その数か月間で強く印象に残っているのが、裁判所のコスト意識の希薄さだ。コスト意識はほぼないと言っていいかもしれない。一つの象徴が裁判員裁判であろう。裁判員側の問題は色々ある(5月22日日経参照)が、裁判を主催する側のコストがクローズアップされたことはないように思う。裁判官は司法試験を受かった純粋培養で、民主的な選任手続きを経ていない。時として社会常識から外れた判決をする恐れがある。だから裁判に一般市民を参加させて一般常識に沿った判決を導こう、という建前は理解できる。しかしそれを実現するためにどのくらいのコストがかかるのか。裁判員の選任コストはもちろん、素人を入れたがゆえの、教育時間を含む冗長な審議のコストもある。プロ裁判官だけの裁判コストの数倍はかかっているだろう。控訴されれば無に帰す結論を得るためのコストとしては高すぎるように思う。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
投稿者等 |
---|
奈良 正哉のコラム
-
2024.12.27
奈良 正哉
所有者不明土地の調査
所有者不明土地の調査を国が代行してくれることになる(12月22日日経)。これで再開発の活性化を見込…
-
2024.12.26
奈良 正哉
スタートアップに中高年転職
スタートアップに転職する中高年が増加している。20代、30代を押さえて、40代以上は2022年に比…
-
2024.12.25
奈良 正哉
香港不動産の苦境
香港の不動産市況は中国本国の余波を受け芳しくない。賃料はピークの半分になっているとのことだ。これで…
-
2024.12.24
奈良 正哉
貸金庫ビジネスの行方
三菱UFJ事件の後、時々貸金庫について聞かれる。ただ支店事務の経験がないのでよく知らないというのが…