監査法人の交代 2
監査法人の交代は、特定の監査法人との「なれ合い」を防止するための、ローテーションを意識したものもあるようだ(1月9日日経)。「なれ合い」が発生するかはともかく、長年やっていれば気心は知れてくるし、大手企業なら常駐監査人もいることはあるから、監査業務を離れても密接な人間関係になることはありえる。他方、監査法人を交代することはコストもかかる。まず、その企業や業界特有の業務やら慣行やらを監査法人側が習得する(させる)のに時間がかかる。「なれ合い」の反語になるが、被監査企業での人間関係を作るのも大変だ。交代させられる監査法人側にとっては顧客を奪われることになるが、現在ではさほどの抵抗は示さないのかもしれない。長期に渡り監査を続けていると、その間の不祥事に少なくとも間接的には連座させられることが多い。監督官庁から求められる再発防止策の多くは、収益を生む監査業務そのものではなく、収益を生まない監督部門の充実に充てられるからだ。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
投稿者等 | |
---|---|
業務分野 |
関連するコラム
-
2024.06.18
島村 謙
株主総会の答弁で大切なこと
1.株主総会の現代的な意義 ガバナンスコード等の影響により、機関投資家の株主にとっては、経営陣と直接…
-
2024.05.14
横地 未央
障害のある人への「合理的配慮の提供」はできていますか
2024年4月1日から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」と…
-
2024.05.14
山田 重則
弁護士が使う、文章の説得力を高めるための5つの視点
2024年4月3日(水)12時~13時にて、「弁護士が使う、文章の説得力を高めるための5つの視点」の…
-
2024.04.12
奈良 正哉
廃業・倒産も悪いことばかりじゃない
ゼロゼロ融資の麻酔も切れ始めて、2023年度、廃業・休業は5万件を数え、倒産も9千件を超えた。対し…
奈良 正哉のコラム
-
2024.07.16
奈良 正哉
地銀政策保有から純投資へ
地銀では保有株式の保有目的区分を、政策投資から純投資に振り替える動きが盛んだそうだ(7月11日日経…
-
2024.07.12
奈良 正哉
ダイドー株主提案取締役辞任
ダイドーリミテッドの6月の株主総会において、アクティビスト提案で選任された取締役のうち一人が、2週…
-
2024.07.11
奈良 正哉
社外取締役に株式報酬
日立は社外取締役への株式報酬制度を導入する(7月10日日経)。社外取締役はもっぱらディフェンスが仕…
-
2024.07.10
奈良 正哉
旅館で働くアジア人
観光業は未曾有の人手不足のようだ(7月9日日経参照)。そのせいか地方観光地の旅館やホテルに泊まると…