監査法人交代
監査法人の交代が相次いでいるそうだ(1月9日日経)。交代の事情として監査報酬の問題があるようだ。昨今の企業不祥事から監査深度も深くなっている。したがって見合った報酬をもらえなければやっていられない、ということだろう。企業側の監査報酬に対する感覚は、「コスト」だ。時に痛くもない腹を探られ、時に痛い所をつかれる、不愉快なサービスへのコストだ。だから、なるべく低いにこしたことはない。ここで、監査役は監査報酬について同意を与える立場にある。立法時の期待は、監査法人に監査役の監査業務を十全に保佐してもらうため、適正な監査報酬を支払うべく、監査役をして安きに流れる執行を牽制することにあったと思う。しかし実際は、監査役、特に内部監査役は直前まで執行部門にいたのであるから、監査役になっても依然「監査報酬=コスト」意識が抜けず、安い方がいいという向きが多いのではないか。適正報酬について本来味方であるはずの監査役さえ敵に回ってしまうと、監査法人としても立つ瀬がない。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
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