ゴーン特別背任立証は難しいのか
ゴーンについては、本丸とされる特別背任での逮捕勾留がされた。報道など読むと、有価証券報告書虚偽記載より、特別背任の方が立証のハードルが高いとの評価が目立つ。かつてバブル崩壊から金融危機に向かう過程で、北海道拓殖銀行の頭取が同罪に問われたが、1審と2審で判断が分かれたことが例として引かれる。ただ、同行の事件の場合、問題になった行為は倒産しかけている企業への融資の是非という、同行の本来業務についてであったが、今回の事件はゴーンの個人取引の尻拭いというもので、全く性質が異なる。銀行の無理な融資が、取引先を倒産させないという銀行の利益のためなのか、倒産させることによって問われる頭取個人の防御の利益なのかは、確かに判断が難しい。ただ、ゴーンの事件は、個人の利益と日産の利益は相反しており、個人の利益=日産の損失である構図ははっきりしている。だからこそ利益相反取引として、日産の取締役会の承認が必要とされた。この事件で特別背任を問えないとすると、何のための条文なのかという疑問を持つ人も多いのではないか。特捜がこの事件の立証ができないようだと存在意義が問われそうだ。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
関連するコラム
-
2024.11.15
奈良 正哉
指名委員会は本物に
法定の他に任意の設置も含めて、指名委員会は機能しているようだ。社長後継者の選定議論を行っている割合…
-
2024.11.14
奈良 正哉
KADOKAWAフリーランスいじめの正当化
フリーランスをいじめても担当者の個人的な利益はない。むしろいやな気持で対応してきたのだろう。「悪い…
-
2024.11.11
奈良 正哉
内部通報者への不利益処分に罰則
企業内の不祥事、特に経営者や経営幹部の不正行為を早期に発見するには、内部通報しかないと思っている。…
-
2024.11.01
奈良 正哉
社外取締役兼職
社外取締役の3社以上の兼職が24%に、女性に限れば34%になるそうだ(10月30日日経)。かくいう…
奈良 正哉のコラム
-
2024.11.21
奈良 正哉
新築マンション価格高騰
10月の新築マンション価格は、首都圏で9,239万円、東京23区に限れば1億2,940万円だそうだ…
-
2024.11.20
奈良 正哉
オワコンメディア
大接戦のはずがトランプ大勝。後半追い上げのはずが斎藤大勝。メディアの偏向報道が非難されている。他方…
-
2024.11.15
奈良 正哉
指名委員会は本物に
法定の他に任意の設置も含めて、指名委員会は機能しているようだ。社長後継者の選定議論を行っている割合…
-
2024.11.14
奈良 正哉
KADOKAWAフリーランスいじめの正当化
フリーランスをいじめても担当者の個人的な利益はない。むしろいやな気持で対応してきたのだろう。「悪い…