司法取引第1号のやるせなさ
三菱日立パワーシステムズという企業が、贈賄行為をした従業員を当局に「差し出す」ことにより、日本の司法取引の幕が開けた。この報に違和感というか、一種のやるせなさを感じたのは私だけではなかったようだ。会社の仕事について、数千万千の賄賂を、上司である役員の了解をとって、贈ったのであるから、企業としての犯罪であって、従業員個人はむしろ「道具」にすぎなかったのではないか。とすると、正犯である企業を免責して、道具である従業員だけを罰するのは、刑法の共犯の趣旨に反しているとも思える。こうしたことをする企業の従業員はその企業についてどういう考えを持つのだろうか。従前と同じロイヤルティを保てるのだろうか。司法取引は企業の内部統制について複雑なインパクトを与えそうだ。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
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