裁判IT化の前に

 実業界から法曹界に転じると驚くことの一つに、ファックスの使用頻度の多さがある。金融をはじめとして個人情報を多く扱う業界では、ファックスの使用頻度は低いどころか原則として禁じられているといっていいであろう。大量のファックスを送受信する手間とコストの問題もあるが、なにより、誤送信による情報漏えいリスクがあるからだ。しかし裁判所も弁護士事務所も、当たり前のように、個人の機微情報の塊ともいえる文書をファックスしている。裁判官も弁護士も特別に注意深い人種だから、誤送信事故などはないのかとも思っていたが、相応に誤送信はあるようだ。人間のすることだから当然である。訴訟法や規則をちょっと変えれば、すぐに暗号付メール送信に代えられると思うがどうか。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

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奈良 正哉

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