民事信託の信託財産 4

 商事信託はもちろん民事信託でも、定期給付に加え信託報酬を有料とすれば、賃貸不動産のような収益資産を組み入れないと、信託財産の元本は日に日に目減りしていく。例えば、障がい者の親亡き後の信託の場合、現行の信託銀行の商品(特定贈与信託)では信託財産として金銭しか受け入れられないため、元本が尽きるのが早いか、障がい者の子が死ぬのが早いか、という残酷な競争になってしまう。だから、税制の恩典があるのにかかわらず、受託残高が頭打ちになっているのであろう。ここで発想を変えて、投資信託のようなリスク商品を組み込むことを考えてはどうだろう。たしかに、障がい者の生活資金でありリスク許容度は低いかもしれないが、われわれの年金資金もGPIF等を通じて、大きなリスクを取って運用されている。元本保証では信託の支出を賄えないのであれば、このような信託でもリスク商品への投資を考えてもいいのではないか。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

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