民事信託の信託財産 3

 民事信託の信託財産として、現金、つまりお札や硬貨を想定している指南書が多い。信託法も分別管理の方法として現金(金銭)の場合を想定している。ただ、現実にどうやって現金を保管管理するのかといえば、受託者専用の財布に入れて、念を入れるにはさらに受託者専用金庫に入れるのであろうか。はなはだ煩雑な感がある。信託は自分で管理処分することが困難な重要な財産をプロである他人(受託者)にその管理処分を任せる仕組みであることを考えると、日常生活の支出たる少額の現金まで関与する必要性は薄い。また、あまりに細かな管理を受託者に要求すると、ますます受託者の選任に窮することにならないかという懸念にもつながるとも思える。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

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