会社法QA(平成26年改正後版) 第23回 資本金制度
【解説】
1 設立時の株式会社の資本金額
会社法においては、設立時の株式会社の資本金の額は、設立に際して株主となる者が株式会社に対して払込み又は給付した財産の額の2分の1以上の額とされています(会社法445条1項・2項)。そして、「株主となる者が株式会社に払込み又は給付した財産の額」とは、出資された財産の評価額から発起人に支払う報酬や設立費用を控除した額とされているため(会社計算規則43条)、設立費用が高額な場合には、結果として設立時の資本金額が0円となる場合が生じることとなっています。
2 小額の資金によって株式会社を設立することが可能
設立に際して最低資本金相当額の財産を会社に出資する必要はなくなりました。そのため、例えば、設立時の資本金の額を0円とする場合には、設立に際して最低限必要となる公証人の定款認証手数料、定款原本に貼付する収入印紙代、登録免許税、その他定款の認証にあたり添付する発起人の印鑑証明書の交付費用などさえ用意できれば、株式会社を設立できるようになりました。
【質問】
会社法では、最低資本金制度が廃止され、「1円で株式会社を設立することが可能となった」と聞きましたが、次の3つの事例について会社法でも認められないものはありますか。
【選択肢】
[1] 設立時の資本金が0円となる設立
[2] 設立時の出資額が1円の設立
[3] 設立時の出資額が0円の設立
【正解】 [3]
【解説】
1 最低資本金制度の廃止の効果とその課題
テーマの解説において述べたとおり,会社法では,最低資本金制度が廃止され,設立に際して最低資本金相当額の財産を出資する必要がなくなりました。そのため従来に比してより小額の資金で株式会社を設立できるようになりました。新規事業の創出促進の観点からは,望ましい改正であったといえるでしょう。
もっとも,容易に株式会社を設立できることとなったことから,法人としての実体がない会社(形骸化事例)や強制執行などを免れるため濫用的に設立された会社(濫用事例)が多くなるのではないかとの懸念もあります。そのような,形骸化事例や濫用事例については,従来,法人格否認の法理によって,その不都合性を回避していましたが,訴訟においてかかる法理の適用が認められる事案は限られており,今後そのような事案にどのように対応すべきか,新たな課題となる危険性が指摘されています。
2 最低資本金制度が廃止されても財産の出資は必要です。
最低資本金制度が廃止されたことによって,株式会社の設立時の資本金の額が0円になることは認められましたが,全く財産が出資されない設立は認められないと考えられており,出資金額が0円となる設立は許されないと考えられています(弥永真生ほか監修『新会社法実務相談』(商事法務)5頁)。
すなわち,一般的な発起設立の場合を考えると,発起人は,株式会社の設立に際し,株式を1株以上引き受けなければならず(会社法25条2項),引き受け後は,遅滞なく引き受けた株式について,出資に係る金銭全額の払い込み,又は出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません(会社法34条1項)。このように出資行為が必要となる以上,設立に際して出資される財産がゼロであることは許されないと考えられているのです。
したがって,最低資本金制度が廃止されても,設立に際しては少なくとも1円の出資を行うことが必要となるため,「1円で株式会社を設立することが可能となった。」と言われているようです。 以上のとおり,最低資本金制度が廃止されても,設立に際しては財産の出資が必要となりますので,設立時の出資額が0円の設立は認められません。
よって,答えは③となります。
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