会社法QA(平成26年改正後版) 第27回 剰余金の配当
【テーマ】 配当の回数・種類・決定機関
【解説】
1 剰余金の配当とは
剰余金の配当は、会社が,株主に対し,その有する株式の数に応じて,会社の財産を分配する行為で,株式会社の本質的要素です。一方,株式会社においては,株主に対する財産分配の限度額が法律上定められています(会社法461条,464条)。
会社が,剰余金の配当をしようとする場合は、その都度,株主総会の普通決議によって,①配当財産の種類(会社法454条4項)・帳簿価額の総額、②株主に対する配当財産の割当てに関する事項(会社法454条2項,3項)、③当該剰余金の配当がその効力を生じる日を定めなければならないのが原則です(会社法454条1項)。
2 配当の回数・時期
会社は,剰余金の配当が効力を生じる日の分配可能額の範囲内で行うのであれば(461条)、一事業年度中に,いつでも回数の制限なく、必要な手続を経ることによって、剰余金の配当(金銭配当・現物配当)を行うことができます(会社法453条、454条1項)。これは、四半期毎に配当を行ういわゆる四半期配当の実施を可能としたものですが、現実にはこれを行っている企業は多くありません。これは、期末配当と中間配当(会社法454条5項)以外に剰余金の配当を行うには、臨時計算書類を作成し、これを確定する手続をとる必要があるからです(会社法441条・461条2項、会社計算規則60条・156条・157条等)。
3 配当の種類
配当財産の種類は,剰余金の配当決議により定められます(会社法454条1項1号,459条1項4号)。配当財産の種類には,①金銭,②金銭以外の財産があります。
配当財産の種類が金銭以外の財産である時,すなわち現物配当の場合には,換金方法の容易さが株主により異なるなどの問題があるため,株主に対し金銭分配請求権を与える場合を除き,株主総会の特別決議によることとし(会社法309条2項10号),金銭分配請求権を付与する場合には、株主は金銭の交付を請求することもできることとされました(会社法454条4項)。
金銭以外の財産を配当する場合,当該財産の価値や単位によっては1株あたりの配当財産は端数とならざるを得ない場合も考えられます。そこで,会社法は,一定数の株式に対してのみ配当財産の割当を行い,一定数に満たない数の株式に対しては,配当財産の価値に相当する金銭を支払うという取扱もできるようにしました(会社法454条4項2号,456条)。
4 剰余金の配当の決定機関
剰余金の配当にあたっては、原則として、株主総会において、配当財産の種類やその額などを決定しなければなりません(会社法454条1項、309条)。
しかし、①会計監査人設置会社(会社法2条11号)であること、②取締役(監査等委員会設置会社の場合は監査等委員である取締役以外の取締役)の任期が1年を超えないこと,③監査等委員会設置会社(会社法2条10号)または指名委員会等設置会社(会社法2条11号)であることの3つの要件を満たす会社は,定款で、取締役会の決議をもって、剰余金の配当を行うことができる旨を定めることができます(会社法459条)。なお,この定款の定めは,最終事業年度に係る計算書類についての会計監査報告の内容に無限定適正意見が含まれており,かつ,当該会計監査報告に係る監査役会・監査等委員会・監査委員会の監査報告の内容として会計監査人の監査の方法・結果を相当でないと認める意見がない場合に限り,効力が認められます。
また、更に進んで、株主総会では剰余金の配当の決議を行わない旨を定めることもできます(会社法460条1項)。そのように剰余金の配当に関する権限を株主総会の権限から外した場合には、株主が株主総会において剰余金の配当に関する株主提案を行うことも原則として出来なくなります。その場合に株主が配当に関する株主提案を行うためには、剰余金の配当に係る提案に加えて、剰余金の配当を取締役会決議によって実施する旨の定款の定めを削除する提案も併せて行う必要があります。
5 剰余金の配当が可能な範囲
剰余金の配当は、会社法461条1項の分配可能額を超えて行うことはできません。分配可能額は、最終の決算期に係る貸借対照表から算出される分配可能額を基準として、最終の決算期後、当該分配を行う時までに行われた金銭等の分配、資本金の減少等による分配可能額の増減を反映させて算出されます(会社法461条2項)。
なお、会社法では、資本金の額に関わらず、純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金があってもこれを株主に分配することは出来ません(会社法458条)。
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