連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク第86回  新設法人でも課税事業者? 

新設法人でも課税事業者? 

Q 当社は、食料品等の輸入業及び卸売行を営む株式会社であり、A社は、食料品の小売業を営む当社の完全子会社です。A社の完全子会社として飲食店を営むB社(資本金500万円)を設立したのですが、設立事業年度におけるB社は、消費税の免税事業者になるという理解でよいのでしょうか。なお、この2~3年の間の、当社の課税売上高は10億円程度であり、A社の課税売上高は2億円~3億円程度です。

 

 新たに設立された法人のように、その課税期間について基準期間がない場合には、原則として消費税の免税事業者になりますが、平成24年の改正により、平成26年4月1日以後に設立された新規設立法人で、以下の①及び②の要件に該当するもの(特定新規設立法人)については、課税事業者になることになりました。

 

①その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者により株式等の50%超を直接又は間接に保有される場合など、他の者により支配される場合に該当すること

②上記①の要件に該当するかどうかの判定の基礎となった他の者及び当該他の者と特殊な関係にある法人のうちいずれかの者(判定対象者)の新規設立法人の当該事業年度の基準期間に相当する期間(基準期間相当期間)における課税売上高が5億円を超えていること

  

そこで、B社が特定新規設立法人に該当するかどうかが問題となりますが、B社は、当社の完全子会社であるA社の完全子会社ですので、当社又はA社を判定の基礎とした場合において①の要件に該当することになり、①の要件に該当するかどうかの判定の基礎となった当社の基準期間相当期間における課税売上高は5億円を超えていますので、②の要件にも該当することになるようにも思われます。

  しかしながら、実は、②の要件における「判定対象者」については、政令(消費税法施行令25条の3①、25条の4①)によって、新規設立法人の株式等を有する者に限定されていますので、B社の株式を有していない当社は「判定対象者」には該当せず、A社のみが「判定対象者」に該当することになります。

  そうすると、A社の基準期間相当期間における課税売上高は5億円以下ですので、B社は特定新規設立法人には該当せず、その設立事業年度においては免税事業者ということになります。

但し、この改正に関する当局による解説において、「なお、こうした制度については、今後、執行の実態を踏まえつつ、信頼される制度を構築する観点から、必要に応じて適時見直しを行っていく必要があると考えます。」と記載されていることからも、課税売上高が5億円を超える法人が直接に株式を保有しないようにすることによって特定新規設立法人になることを免れるような事例が多くみられるような場合には、「判定対象者」を限定した政令の改正がなされる可能性もあると思われますので、改正の動向には留意が必要となります。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 瀧谷耕二

※ 本記事の内容は、執筆時現在の法令等に基づいています。

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