連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第76回 平成28年度税制改正について
平成28年度税制改正について
Q 平成28年度税制改正の大綱が昨年末に発表されたと聞きました。法人課税に関してどのような改正が行われるのでしょうか。 |
A 平成28年度税制改正の大綱では、「現下の経済情勢等を踏まえ、経済の好循環を確実なものとする観点から、成長志向の法人税改革等を行う」こととされました。具体的な改正項目としては、①法人税率の引下げ(法人税率及び法人事業税所得割の標準税率の引下げ)、②課税ベースの拡大(租税特別措置、減価償却、欠損金繰越控除の見直し)などが掲げられています。 |
平成24年12月24日に、「平成28年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。その基本的な考え方は次のように整理されています。
「現下の経済情勢等を踏まえ、経済の好循環を確実なものとする観点から成長志向の法人税改革等を行うとともに、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として消費税の軽減税率制度を導入する。あわせて、少子化対策・教育再生や地方創生の推進等に取り組むとともに、グローバルなビジネスモデルに適合した国際課税ルールの再構築を行うための税制上の措置を講ずる。このほか、震災からの復興を支援するための税制上の措置等を講ずる。」
以上の考え方に基づき、法人課税に関しては、主に、次の事項について改正を行うこととされました。
(1)法人税率等の引下げ
法人税率及び法人事業税の標準税率を段階的に引き下げることとされました。これにより、現行32.11%の法人実効税率が、平成28年度・平成29年度には29.97%、平成30年度には29.74%となります(資本金1億円超の普通法人の場合)。
(2)租税特別措置の見直し
生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(生産性向上設備投資促進税制)を順次、縮減し、平成29年度には廃止することとされました。その他の特例措置(環境関連投資促進税制、雇用促進税制)についても、所要の見直しを行うこととされました。
(3)減価償却の見直し
平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物の償却方法について、定率法を廃止し、定額法に一本化することとされました。
(4)欠損金繰越控除の見直し
欠損金の繰越控除限度の段階的な引下げ幅について変更を行うこととされました(平成28年度:所得の65%→60%、平成29年度:所得の50%→55%)。また、併せて繰越期間の変更も行われました(平成29年度:10年→9年)。
(5)法人事業税の外形標準課税の拡大
法人事業税の外形標準課税(付加価値割及び資本割)の標準税率を平成28年度から引き上げることとされました(付加価値割:072%→1.2%、資本割:0.3%→0.5%)。
鳥飼総合法律事務所
※ 本記事の内容は、平成27年3月末現在の法令等に基づいています。
※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。
関連するコラム
-
2024.07.12
橋本 浩史
法人が支出した取締役の損害賠償金の損金算入の可否が争われた税務判決の紹介 ~横浜地方裁判所令和6年1月17日判決TAINS Z888-2558~
1 はじめに 法人が、その取締役が他の法人の取締役としての職務を怠ったことを理由に負担した会社法42…
-
2024.06.14
橋本 浩史
相続後に条件成就して実現した債務免除益に対する所得税課税の可否が争われた税務判決の紹介 ~東京高等裁判所令和6年1月25日判決(上告)~
1 はじめに 相続時に相続財産から控除されなかった訴訟上の和解に基づく債務が、相続開始後に条件成就に…
-
2024.05.13
橋本 浩史
賃貸人以外の者から受領した「損失補償金」が「資産の譲渡等」の対価に該当し消費税の課税対象となるか否かが争われた税務訴訟判決の紹介 ~広島地方裁判所令和6年1月10日判決TAINS Z888-2557(確定)~
1 はじめに 消費税は、物品やサービスの各取引段階において付与される付加価値に着目して課税するもので…
-
2024.04.12
橋本 浩史
総則6項を適用した課税処分を取り消した税務訴訟判決の紹介~東京地裁令和6年1月18日判決TAINS Z888-2556~
1 はじめに 財産評価基本通達(評価通達)に基づいて評価したマンションの評価額を、評価通達6(「総則…