連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第66回 差押えを受けている財産の売却を猶予してもらえる(換価の猶予)?
差押えを受けている財産の売却を猶予してもらえる(換価の猶予)?
Q 弊社は,国税を滞納し,事業用不動産の差押えを受けていますが,国税を一時に納付すると,事業の継続をすることが困難になります。差押えを受けている財産の売却を何とか猶予してもらう方法はないでしょうか。 |
A 国税を一時に納付することにより,事業の継続又は生活の維持を困難にする恐れがある場合,一定の要件を充たした場合には,差押え財産の換価(売却)が猶予されるという制度があります。この換価の猶予は,平成26年税制改正(以下「本改正」といいます。)により,納税者からの申請が可能となりましたので,御社において当該制度が利用できるのか,検討してみるとよいでしょう。
[解説]
1.換価の猶予
国税を納期限までに納付していない場合,納税者は,財産の差押え等の滞納処分を受けることがありますが,税務署長は,一定の要件を充たす場合には,滞納処分による財産の換価を猶予することができます。換価の猶予は,本改正前は,あくまで,職権でのみなされるものでしたが,本改正で,納税者の負担の軽減を図り,早期かつ的確な納税の履行を確保するという観点から,滞納者がその国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合で,一定の要件を充たす場合には,税務署長は,滞納者の申請に基づいて,換価の猶予ができることになりました。(この手続きは,平成27年4月1日以降に行う猶予の申請について適用されます。)
2.換価の猶予が認められる要件
納税者の申請による換価の猶予は,滞納者がその国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合において,その者が納税について誠実な意思を有すると認められるときに,その国税の納期限から6月以内にされたその者の申請に基づいて,その納付すべき国税につき滞納処分による財産についてすることができます。
ただし,当該申請に係る国税以外の国税の滞納がある場合には適用されず,また,猶予された滞納国税は,原則,猶予された期間内の各月に分割して納付しなければなりません。なお,本改正で,要担保徴収額の最低限度額も100万円に引き上げられ,その猶予期間が3月以内の場合には担保は不要となりました。
3.換価の猶予が認められた場合
換価の猶予が認められた場合には,①滞納処分に係る換価の猶予が1年以内の範囲で認められるほか(ただし,一定の要件を充たす場合には,当初の猶予期間と併せて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。),②換価の猶予が認められた期間中の延滞税の一部が免除され,また,③必要があると認めるときは,差押えにより滞納者の事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産の差押えを猶予し又は解除される場合があります。
4.おわりに
本改正では,換価の猶予のほか納税の猶予についての見直しもなされています。詳しくは,国税庁の下記HPをご参照されるとよいでしょう。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/yuyo-tebiki/pdf/00.pdf
鳥飼総合法律事務所 弁護士 堀 招子
※ 本記事の内容は、平成27年3月末現在の法令等に基づいています。
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