連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第63回 事前照会したのに課税される?
事前照会したのに課税される?
Q 事前照会という制度があると聞きました。どういう制度なのでしょうか。また、事前照会をした場合、その回答に基いて申告をすれば、否認されないのでしょうか。
A 事前照会とは、取引をめぐる課税関係が不明な場合に、課税当局に照会をして文書による回答を得る手続をいいます。法律の根拠はありませんが、納税者の予見可能性を高めるために、課税当局の事務運営指針に基いて行われています。
事前照会の対象となるのは、申告前の国税に関するものに限られます。ただし、仮定の事実関係や複数の選択肢がある事実関係に基づくもの、実地確認や関係者への照会等による事実認定を要するものは、事前照会の対象となりません。また、調査等の手続、徴収等の手続、酒税行政に関するものや、個々の財産の評価、取引等価額の算定・妥当性の判断に関するものも、事前照会の対象とはなりません。
事前照会は課税のリスクを減らす方策として有益ですが、法的な根拠がないため、事前照会に対する回答には法的拘束力はないとされています。つまり、事前照会に対する回答に基いて申告をしたとしても、否認される可能性は完全にはなくならないということです。
特に注意が必要なのは、事前照会で前提とされていた事実関係と税務調査で把握された事実が異なる場合です。大手製薬会社が事前照会に対する回答に基いて申告をしたところ、税務調査で把握された事実と異なるとして否認されたとの報道がなされました。当該事案は不服申立てされたため、最終的な決着はついていませんが、事前照会をする際には、前提とする事実に誤りがないか、慎重に検討する必要がありそうです。
鳥飼総合法律事務所
※ 本記事の内容は、平成26年3月末現在の法令等及び税制改正大綱に基づいています。
※ 「リスクコンシェルジュ」連載全記事にはこちらからアクセスできます。
関連するコラム
-
2025.02.14
橋本 浩史
所得税法72条1項の「損失」の意義が争われた税務判決 ~東京地裁令和6年1月23日判決~
1 はじめに 所得税法72条は雑損控除を定めた規定であり、同条1項は、居住者又はその者と生計を一にす…
-
2025.01.20
奈良 正哉
固定資産税還付訴訟
払い過ぎた固定資産税を返してくれ、という訴訟の弁論が17日最高裁で行われた。対象の固定資産は複雑な…
-
2025.01.17
山田 重則
複合構造家屋において低層階の構造の経年減点補正率を適用することは適法か?
固定資産税の金額を大きく左右する「経年減点補正率」は、建物の構造がSRC造/RC造なのか、それともS…
-
2025.01.17
山田 重則
固定資産税実務Q&A
<総論> Q 固定資産税の過大徴収はどの程度起きているか? Q 近年、新聞報道された過大徴収事案には…