【労基署対応トラの巻】月の時間外労働時間,危険ラインを超えていませんか?
「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が平成26年6月25日に公布され,平成27年12月1日からストレスチェック制度が施行されるなど,近年国は労働者の健康障害の防止に非常に力を入れています。
(ストレスチェック制度の詳細については,厚生労働省のHPをご覧ください。)
そして,労働者の健康障害を発生させる大きな要因の一つが,長時間労働です。
前回の記事でご紹介した行政運営方針においても,長時間労働が重点項目として大きくピックアップされており,労基署が長時間労働について厳格に監督する方針をとっていることが分かります。
では,月にどれくらい時間外労働をさせていたら,労基署に目を付けられてしまうのでしょうか?
その答えを探る際に,参考になるのが,脳・心臓疾患および精神障害の労災認定基準です。
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【脳・心臓疾患の労災認定基準】
◆発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
◆発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること を踏まえて判断すること。
※平成13年12月12日厚生労働省発表「脳・心臓疾患の認定基準の改正について」より抜粋
【精神障害の労災認定基準】
強い心理的負荷となる時間外労働時間数として,
◆発病直前の連続した2か月間に、1月当たり約120時間以上
◆発病直前の連続した3か月間に、1月当たり約100時間以上
※平成23年12月26日厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を策定」
→「心理的負荷による精神障害の認定基準の概要」(PDFファイル)より抜粋
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以上をざっくりまとめると,毎月の時間外労働時間について,
◆平均45時間以下 → 身体および精神への影響が小さい
◆平均80時間を超える → 身体への影響が大きい
◆平均100時間を超える → 身体および精神への影響が大きい
と国は考えているようです。
とすれば,労働者の毎月の時間外労働時間について,
◆平均45時間 = 安全ライン
◆平均80時間 = 危険ライン
という点を,使用者としてはまず押さえておくべきです。
また,時間外労働の割増賃金について,
◆月60時間以内の場合 → 2割5分以上
◆月60時間を超える場合 → 5割以上
と定められている(労基法37条1項)ことからすると,国は月60時間を超える時間外労働に対してより強い制限をかける方針であることが分かります。
とすれば,平均45時間を超えていても,最大月60時間までであれば,ギリギリ安全圏なのでは?という気がします。
いずれにしても,長時間労働は,労基署に目を付けられるという行政面だけでなく,未払い残業代請求や過労死・過労自殺が発生した場合の損害賠償請求など民事面のリスクもはらむ問題ですので,使用者の皆様には,労働者に長時間労働をさせずに上手く経営していける方法をなんとかして見つけ出すという方向に発想を切り替えていただいた方がよろしいかと思います。(その難しさは重々承知のうえですが…)
鳥飼総合法律事務所
弁護士 川久保皆実
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