連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第56回 海外のサーバーからの音楽のダウンロード
海外のサーバーからの音楽のダウンロード
Q 今までは、海外にサーバーのある会社から音楽をダウンロードしても、消費税はかからなかったと思うのですが、今後は課税されるようになるのですか? |
A 平成27年税制改正により内外判定基準の見直しやリバースチャージ方式の導入が行われることとなりました。これにより、平成27年10月1日からは、海外のサーバーからのダウンロードであっても、課税取引として取扱われることになります。
[解説]
1.内外判定基準の見直し
消費税法は、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地が国内である場合に、当該役務の提供に対して消費税を課していました(消費税法施行令6条2項7号)。しかし、インターネット上で行われる電子書籍・音楽・広告の配信などについて、国境を意識することなく、国境をまたいだ取引が容易に行えることとなった現在、国外からの配信であれば消費税がかからないため、国内外の事業者に価格差が生じ、また、国内の事業者があえて海外にサーバーを置く例も見受けられるようになりました。
これらの課税上の弊害を排除するため、平成27年税制改正においては、役務提供のうち、電子書籍・音楽・広告の配信等の「電気通信役務の提供」については、役務の提供を受ける者の住所地等が国内であれば、当該役務の提供に対して消費税を課すこととしました。
この改正によって、平成27年10月1日以降は、海外にサーバーのある会社から音楽をダウンロードした場合であっても、配信を受ける者が日本に居住していれば、当該取引には消費税が課されることとなります。
2.リバースチャージ方式
ところで、上記のように海外からの役務提供に対して消費税を課すとしても、具体的にはどのように海外の事業者に納税の義務を負わせるのでしょうか。
改正法においては、内外判定基準が見直された上記「電気通信役務の提供」について、役務提供の相手先が国内の事業者である場合、当該取引に係る消費税の納税義務がサービスの提供者からサービスを受ける事業者の側に転換されることになります。すなわち、事業として他の者から受けた事業者向け電気通信役務の提供については、「特定仕入れ」として課税対象とされ、また、国内において行った課税仕入れのうち、特定仕入れに該当するもの(「特定課税仕入れ」)につき、納税義務の対象とされます。ただし、課税売上割合が95%以上である事業者の場合には、当分の間、適用の対象外とされます。
また、役務提供の相手先が国内の事業者ではなく、消費者である場合には本方式は適用されず、海外の事業者がそのまま納税義務者となります。
3.登録国外事業者制度
本税制改正により、国内の消費者に対してサービスの提供を行う国外の事業者は、新たに消費税の納税義務を負うことになります。当該国外事業者は、日本の税務署に対し、消費者向け電気通信役務の提供に係る消費税を申告納税する必要が生じますが、国は、これらの国外事業者からの申請により、国税庁長官の登録を受ける制度を設けることとしています。
国外事業者からの納税については、その実効性につき疑問視されるところでもありますが、これから試行錯誤していくことになるでしょう。
鳥飼総合法律事務所 税理士 窪澤 朋子
※ 本記事の内容は、平成26年3月末現在の法令等及び税制改正大綱に基づいています。
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