連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第48回 役員報酬の「適正報酬額」の算定方法?

役員報酬の「適正報酬額」の算定方法?

 

 当社は,焼酎の製造・販売を目的とする同族会社ですが,代表者の妻でもある非常勤取締役のXに毎月200万円の役員報酬を支給してきました。ところが,この度税務調査で,報酬額のうち「適正報酬額」である20万円を超える部分は「不相当に高額な部分の金額」であり,当社の損金の額に算入できないと指摘されました。なぜ,この部分の金額は損金に算入できないのでしょうか。また,「適正報酬額」はどのように算定したらよいのでしょうか。

 

1 過大な役員給与の損金不算入(退職給与以外の給与)

 法人税法上,役員報酬の額のうち,不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されません(法人税法34条2項)。この「不相当に高額な部分の金額」とは,支給した報酬のうち,①当該役員の職務の内容,当該法人の収益及び使用人に対する給与の支給の状況,同種・類似規模の法人の役員給与の支給の状況等に照らし相当であると認められる金額を超える部分の金額(実質基準),または,②定款の規定,株主総会の決議等により定められている役員給与の限度額等を超える部分の金額(形式基準),のいずれか多い金額とされています(法人税法施行令70条1号)。

実質基準による過大部分の額
               >いずれか多い額が損金不算入
形式的基準による過大部分の額

 

2 実質基準による「適正報酬額」の算定方法

 以上の基準のうち,実質基準により「相当であると認められる金額」,すなわち「適正報酬額」は,法令上一義的に算出できるものではなく,税務訴訟で争われる事例も少なくありません。

 多くの裁判例では,類似法人(同種の事業を営む法人でその事業規模等が類似するものとして選定された通常複数の法人)の売上金額,売上総利益の額,使用人最高給与額及び個人換算所得金額(同族会社を個人事業者として捉えた場合の所得金額)の4項目を使用した以下の計算式(又は類似の計算式)を用いて算出した金額を適正報酬額として認めています(名古屋地裁平成11年5月17日判決等)。 〔計算式はクリックで拡大〕

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 また,御社と類似の事案で,類似法人における非常勤の役員に対する報酬額の平均をもって適正報酬額と認定した裁判例もあります(東京高裁平成23年2月24日)。

 本来,役員報酬の「適正報酬額」は当該役員の法人の業績に対する貢献度等の個別の事情に鑑みて決せらせるべきであり,以上のような画一的な基準が,「適正報酬額」算出の計算式として妥当なものか疑問がないわけではないですが,少なくとも裁判例の大勢として把握しておくべきでしょう

仮に類似法人の役員報酬額に比較して高額な報酬を支給する場合には,当該役員の職務の内容,業績への貢献度等,当該報酬が「適正報酬額」であることを裏付ける御社の個別・特有な事情の有無を十分に検討すべきと考えます。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士 橋本浩史

※ 本記事の内容は、平成26年3月末現在の法令等及び税制改正大綱に基づいています。

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