連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第16回 その謝礼、交際費で大丈夫ですか?
その謝礼、交際費で大丈夫ですか?
Q.当社では、業界の慣例などもあり、取引先の仕入れ担当者に金品を渡すことがあります。これをしませんと、仕入れ決定権を持つ取引先担当者が、当社のライバル会社を納入業者に切り換えてしまうためです。したがいまして当社では、これも必要経費と割り切って支払っています。ただ、当社ではこれらの支出を交際費として処理をして、限度を超える部分は損金不算入としていますので、税務上の問題はないと考えて良いでしょうか?
A.場合によっては、使途秘匿金となって追加課税されることがありますので注意しましょう。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用をいうとされています。
得意先を食事に招いたり、旅行や観劇にお連れしたり、お中元やお歳暮をお送りするというのが典型的でしょう。法人税法(租税特別措置法)では、このような交際費等について損金に算入することが出来る額に一定の限度を設け、その限度額を超える金額については損金の額に算入しないこととされています。
ここまではよく知られているところです。
一方、ご質問にもあるように、得意先の仕入れ担当者の歓心を得て商品の納入に便宜を図ってもらっているようなケースも業界によってはあるようです。そこで会社としては商品の納入をさせてもらえるならということで、仕入れ担当者に金品を渡すということになるのですが、このような場合、その仕入れ担当者の立場を考慮して、会社の帳簿に住所や名前などを記載できないということがあります。
その際に適用されるのが使途秘匿金課税です。
使途秘匿金の支出とは、法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由を当該法人の帳簿書類に記載していないものをいうとされています。
この使途秘匿金の支出があった場合には、まずこれを損金の額に算入しないこととされた上で、さらにその支出額に対して40%の追加課税が行われます。つまり、損金不算入で1回課税されて、さらに支出した額にもう1回課税されることになります。
なお、使途秘匿金課税は通常の法人税の額とは別に税負担が生じることとされていますから、赤字決算の法人でその事業年度に通常の法人税が発生しない場合であっても、使途秘匿金に対する税負担は発生してしまうことに注意が必要です。
ただし、その相手方の氏名や住所等を帳簿書類に記載していない場合であっても、それが相手方の氏名や住所等を秘匿するためではないと認められるときはこの限りではありません。
以上のように、通常の法人税も発生する法人の場合、地方税の負担なども考えますと、「使途秘匿金の支出があった場合には、支出した金額とほぼ同額の税金負担をする」こととなります。
取引先への謝礼については、ついつい交際費課税だけを考えがちですが、さらなる課税が待ち受ける使途秘匿金課税にも注意が必要です。
鳥飼総合法律事務所 税務部長 高田貴史
※ 本記事の内容は、2013年6月現在の法令等に基づいています。
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