連載 リスクコンシェルジュ~知財関連リスク 第14回 ブログへの画像利用で、損害賠償されることも

 

ブログへの画像利用で、損害賠償されることも

 

1 思わぬ損害賠償請求

 Bさんはスーパーを経営している株式会社A社の千代田区支店長であり、「Aスーパー千代田区支店長B」という名前で、販売促進のためブログを作成しています。そのブログの中では、特売品情報やイベント情報を掲載したり、日々の出来事を綴ったりしていました。Bさんは文章だけでは味気ないと思い、ブログのネタにあわせて画像をインターネットで検索して、それをコピーして貼り付けていました。

 あるとき、Bさんが掲載していた画像のコピー元のサイトのCさんからBさん及びA社に対して、著作権が侵害されたのでBさんの不法行為に基づき損害賠償請求をするという内容証明郵便が届きました。

 

2 ブログへの画像掲載と著作権侵害

(1)この事例は実際に起きた事件をアレンジしたものです。ちなみに、実際の事件では、損害賠償を請求したのは著作権者から著作権を買い取り画像の貸出事業を行っていた画像素材供給会社でした。

ブログに画像を掲載することはよく行われていますが、画像はインターネットの検索で簡単に見つけることができ、また、コピーも簡単です。しかし、このように簡単に手に入る画像にも「著作権」はあります。インターネットで見つかる画像のほとんどすべてに著作権があって、その画像を作成した人やその人が許可した人以外は、コピーやネット掲載ができないのです。

 よって、画像を利用する場合には、著作権者が、掲載している画像のコピーやネット掲載を許可しているのかどうかを確認しなければなりません。通常のサイトで掲載されている画像では、特別の許可が書かれていないのであれば、基本的にすべてコピーやネット掲載はできないと考えるべきです。

(2)中でも、商業的に画像を配布しているサイトがあることには注意が必要です。そのようなサイトの中の“無料画像”を使用する場合は問題はありませんが、有料画像の場合には問題が生じる場合があります。

たとえば、ヤフーの検索で「花」と入れて画像を検索すると、たくさんの画像が出てきます。この中にも画像配布サイト中の有料画像が存在しているかもしれません。それを知らずにこの画像をブログに掲載してしまうと、無断掲載が見つかった場合に、利用料相当額の損害賠償を請求されることがあります。先ほどのBさんの事例がこの場合でした。

(3)そして、この画像の料金形態によっては、その額が高額になることもあります。画像は一枚何円で何回でも使える場合もありますが、ページごとに利用料が必要な場合もあります。ブログは毎日でも更新する可能性があるものですから、シンボルマークのように毎ページに使っていたものが、仮に有料画像であった場合には、著作権者から思わぬ請求を受ける可能性があるため、注意が必要です。

 なお、ブログに使ったくらいで見つかるか?という疑問があるかもしれませんが、検索は難しいものではないため、著作権者が定期的にチェックをしていることも考えられます。

 

3 会社の責任

 さらに、A社にも損害賠償責任が発生します。根拠は、使用者責任(民法715条)です。使用者責任とは、不法行為を行った者を雇っている会社に対しても不法行為責任を追及できるという民法に規定のある不法行為の一類型です。

使用者責任が発生するためには、違法な行為が使用者の「事業の執行について」行われたことが必要です。この事業執行性については、裁判では外形的に事業執行と認められるかどうか、という点が重視されますが、販促ブログの場合にはBさんのように、企業名をつけて名前を掲載している場合が多いでしょう。企業名が書いてある以上、実際は作成者の個人的なブログという面が強かったとしても、事業の執行についてなされた行為であると判断される可能性が高いです。よって、A社の責任を免れるのは難しいということになります。

 

簡単に手に入る画像でも著作権があるはずだ、という意識が重要です。

 

鳥飼総合法律事務所

※ 本記事の内容は、2013年4月現在の法令等に基づいています。

 

 

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