連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第14回 会社分割の注意点(会社分割と租税債務の引き継ぎについて)
税務に関するQ&A
第14回 会社分割の注意点(会社分割と租税債務の引き継ぎについて)
Q: 会社分割を利用すれば、承継させたくない借金は元の会社に残したままにしておくこができ、身軽な状態(借金の無い状態)で優良事業のみを切り出すことができると聞いたことがあります。その場合、同じように税金についても引き継ぐ必要がなくなるのでしょうか?
A: 税金についてはそういうわけにはいきません。優良事業を引き継いだ会社が、元の会社(優良事業を切り出した会社)の税金を引き継がなければならないケースがありますので注意が必要です。
[解説]
1.分割により事業を承継した会社が分割をした会社の税金について連帯して納付する責任を負う場合
法人が分社型分割以外の分割(注)をした場合には、当該分割により事業を承継した法人は、当該分割をした法人の分割の日前に納税義務の成立した国税(その加算税等の附帯税を含む。)について、一定の限度で連帯納付の責任を負います。
法人の国税は、その法人が分割するまではその法人の全ての財産を引当として徴収することができますが、法人が分割をした場合には、その分割法人の分割前の国税の引当財産が減少することになり、国税の徴収確保が困難になるおそれがあることから、それを防ぐため、このような措置が講じられています。
(注)分社型分割とは、分割の日において当該分割に係る分割対価資産が分割法人の株主等に交付されない(分割対価資産が分割法人にとどまる)場合の分割をいいます。連帯納付の責任を負う分割は、この分社型分割以外の分割です。
2.分割により事業を承継した会社が分割をした会社の第二次納税義務を負う場合
法人の分割のうち分社型分割にあっては、分割法人は、分割承継法人に移転した純資産の額に見合う分割法人の株式等を取得することとなり(分割対価資産が株主に交付されないので)、分割法人の財産は減少しないことから、上記1の連帯納付責任の対象とはされていません。
では、分社型分割であれば、分割法人の租税債務を引き継がなくて済むかといいますと、そういうわけにはいきません。一定の要件に該当する場合には、分社型分割により事業を承継した法人に対して第二次納税義務(注)というものが課される場合があります(平20.10.1、裁決事例集No.76 573頁)。
(注)第二次納税義務とは、本来の納税義務者から税金の全部又は一部を徴収することが不可能であると認められる場合に、本来の納税義務者と特殊の関係にある者を第二次納税義務者とし、その者に本来の納税義務者に代わる義務を負担させるものです。
3.まとめ
会社分割を利用して優良事業を切り出して、私法上の債務を引き継がないようにしたとしても、事業を承継した会社が租税債務を引き継いでしまい、想定外の経済的負担を負う可能性があります。このような想定外の事態に陥らないようにするために、専門家を交えてしっかりと検討することが肝要です。
鳥飼総合法律事務所 税理士 佐野 幸雄
※ 本記事の内容は、2013年4月現在の法令等に基づいています。
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