連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第6回 税務に関するQ&A 年末調整の落とし穴

税務に関するQ&A

第6回 年末調整の落とし穴

Q 年末調整の落とし穴

 私は、勤務先で毎年年末調整を受けているので確定申告をしたことがありません。しかし、先日、株式の譲渡益の申告をしていなかったとして当局から連絡を受け、あわてて追加の納税をすることになりました。

 漏れていた税金を払わなければならないのはわかりますが、通常の給与についてはきちんと年末調整が行われていたはずです。なぜ「無申告」加算税を払わなければならないのでしょうか。

 

A 年末調整は確定申告とは異なる手続きのため、年末調整を受けて所得税の年額の計算が正しく行われていたとしても、所得が漏れていたことが発覚した場合に課される加算税は過少申告加算税ではなく、無申告加算税になります。

 

[解説]

1.年末調整は確定申告の代わり?

 給与所得者の場合、原則として勤務先に扶養控除申告書や保険料控除申告書を提出することで年末調整の手続きが行われ、それまでに源泉徴収された所得税額と1年間に支払うべき所得税額との差額が徴収又は還付されることになります。

 そして、年末調整を受けた場合、所得税額の精算は済んでいますので、年末調整の対象とはならない医療費控除や寄附金控除の適用を受ける場合などを除けば、本人が改めて確定申告をする必要はありません(給与以外の所得が20万円を超える場合には、年末調整を受けたとしても確定申告の必要があります。)。

 ところで、年末調整を受けずに、勤務先から交付された源泉徴収票を用いて自身で確定申告をすることも可能です。年末調整による場合も、確定申告を行った場合も、当然ですが年間の所得税額の合計は同額になります。

2.年末調整と確定申告の決定的な相違点

 ただし、年末調整と確定申告の決定的な相違点は、年末調整により所得税額が精算されていても、実際に確定申告書を税務署に提出したわけではありませんから、「確定申告」の手続きを行ったことにはならない点です。

 この相違点は、通常の場面では特段の支障はないのですが、Qのように申告漏れが発生した場合には、加算税の税率の違いに結びついてしまいます。

3.過少申告加算税と無申告加算税

確定申告をしていた納税者が申告漏れを指摘された場合には、ペナルティーとして課される加算税(過少申告加算税)は原則として10%~15%ですが、年末調整のみであった納税者が申告漏れを指摘された場合には、無申告加算税が課されることになるため、原則として15%~20%と、確定申告をしていた場合に比べてペナルティー部分の負担が重くなります。

これは、「無申告」であったことのペナルティーをより重くするという趣旨で設けられている違いなのですが、「年末調整」という税務手続きを終了したと認識している納税者にとっては、かなり違和感のあるペナルティーかもしれません。

いずれにしても、サラリーマンだから、源泉されているから、などという発想ではなく、自身の確定申告の必要の有無を検討することは重要だといえます。

 

鳥飼総合法律事務所 税理士 窪澤 朋子

※ 本記事の内容は、2012年11月現在の法令等に基づいています。

 

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